
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

化学機動中隊はどんな部隊?

どこの消防署に配置してあるの?

どんな車両や資器材があるの?

化学機動中隊に入るにはどうすればいい?
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、化学機動中隊のことがざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。
東京消防庁に10中隊配置
化学機動中隊は、東京消防庁に10中隊配置しています。
配置消防署は、赤坂消防署・大井消防署・本郷消防署・志村消防署・千住消防署・城東消防署・三鷹消防署・東村山消防署・福生消防署・日野消防署です。
人員は、各消防署に8名から9名いて、東京消防庁の庁内資格である「化学災害技術」を有しています。

化学災害が発生していない時は、ポンプ隊として編成されていて、ポンプ車に乗車して災害現場(化学災害以外)に出場します。
化学災害が発生した時は、特殊災害対策車(HAZ-MAT)に乗車して、現場に向かいます。

少しイメージが難しいと思いますが、同じメンバーでポンプ中隊と化学機動中隊が災害によって切り替わっているのです。
ポンプ中隊について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。

化学災害とは
化学災害のことをNBC災害と言っています。
これは、以下の英語の頭文字をとったものです。
■Nuclear(核燃料物質や放射性物質)による災害《N災害》
■Biological(生物剤)による災害《B災害》
■Chemical(化学物質)による災害《C災害》
例えば…
N災害は、東日本大震災で福島原発の炉心損傷や格納容器の破損、水素爆発などによって、放射性物質が大気中に大量に放出された事故が該当します。
B災害は、2001年に発生したアメリカ炭疽菌事件(同時多発テロ(9.11)の直後に、炭疽菌の芽胞が封書に入れられて、報道機関や政治家宛てに郵送された事件)が有名ですが、日本でこのような意図的なB災害は発生していません。
C災害は、地下鉄サリン事件が有名です。身近な事例として、家庭用洗剤で酸性のものと塩酸のものを混ぜてしまい、有害ガスを発生させてしまった場合は、C災害として部隊が出場します。
東京消防庁の化学機動中隊が出場する災害のほとんどがC災害です。
研究室で有毒ガスを発生させてしまったり…
下水道管などで有毒ガス(硫化水素)が発生したり…
工業施設や製造工場で化学物質が流出してしまったり…
これらも該当します。

化学機動中隊は、一般家庭のガスの漏洩でも出場することがあります。
これは、C災害(化学物質)を疑っているためです。
この災害について、書いた記事がありますので下にリンクを貼っておきます。

防護衣と測定器
化学機動中隊の災害活動で防護服と測定器は、欠かせません。
災害現場では、どんな物質が漏洩していて、どんな危険があるのか分かりません。
先ずは、身を守るための防護服を着て、測定器によって、何の物質が漏洩しているか、どんな危険性があるか分析しながら徐々に発災場所へと近づいていきます。
また、漏洩物質の濃度測定の結果から危険ゾーン(安全地帯、危険地帯、除染地帯など)を設定して、活動隊員の安全を確保しながら役割分担を決めていきます。
そして、危険を排除・拡散防止しながら、要救助者がいれば救出していくのです。

それでは、主な防護衣と測定器を見ていきましょう
【防護衣】
■放射能防護衣
放射性物質による汚染や、体内への取り込みを防ぎます。
■陽圧式防護衣
防護衣内部に圧力がかかっていて、あらゆる有害物質の取り込みを防ぎます。
■毒劇物防護衣
液体の漏洩や、小規模な化学災害、除染活動等で有害物質の取り込みを防ぎます。
* いずれの防護衣も空気呼吸器を背負って着装します。

【測定器】
《N災害用》
■サーベイメータ
放射性物質に汚染の有無を検査します。
■空間線量率計
γ線・中性子線などを測定します。
《B災害用》
■生物剤捕集器
空気中に浮遊する生物剤の捕集ができます。
■生物剤検知器
9種類のチケットを使い、生物剤の有無を検知します。
《C災害用》
■質量分析装置
約17万種類の気体の定性・定量分析が可能で、混合ガスも測定できます。
■赤外線分析装置
約1万7千種類の、固体・液体の分析を行います。

化学機動中隊は、指令内容や現場の関係者から聞いた情報をもとに適した防護衣や資器材を選んで、災害(化学物質)に立ち向かっていきます。
化学機動中隊になるには
東京消防庁では、化学機動中隊の隊員になりたい人も消防学校に入校します。
そこで消防士になるための基礎教育を受け、消防署に巣立っていきます。
消防署では、はじめはポンプ隊員として配属されます。
訓練に励み、災害に出場し、訓練や事務を行い、雑用をこなす。
消防士なりたては、ポンプ隊員の基礎を学ぶ大切な期間です。
化学機動中隊の隊員になりたい人も、この期間で災害現場での隊長の考えやポンプ隊員の動きを学び、化学機動中隊の隊員になった後もこれらの知識や経験を活かしていく必要があります。

化学機動中隊の隊員は、隊長職(消防司令補)に昇任していく人がたくさんいます。その時に隊員の知識や経験を積んでいないと部下に指導ができなくなってしまいます。
化学機動中隊志望でもポンプ隊員の基礎をしっかり身に付けておくことが大切です。
それでは、化学機動中隊の隊員になるまでの道を見ていきましょう。
化学災害選抜試験を受験
(ポンプ機関技術と中型一種免許を有していることが条件です)

・第一次試験(学科試験)
⇒化学機動中隊の隊員として必要な規程・基準、化学の基本的な知識などから出題されます。
・第二次試験(面接)
⇒面接は、実務知識や隊員としての適性が確認されます。
試験に合格すると化学災害技術研修に行きます。
期間は約3週間。
ここで化学機動中隊に必要な化学災害の知識、測定器の取り扱い要領などを習得することで「化学災害技術」が認定されます。
その後、化学機動中隊の隊員になることができるのです。
化学機動中隊の魅力
化学機動中隊は、東京消防庁管内の化学災害に対応できる特別な部隊です。
人員も選抜試験に合格し、「化学災害技術」を有していないと部隊に入ることはできません。
知識や資器材の取扱いも専門的であるため、化学災害について頼りになる存在です。
特に災害現場で責任者となる大隊長にとって、化学機動中隊には大きな信頼を寄せています。
化学災害の被害を最小限に留め、収束させるには、化学機動中隊の専門的な知識や測定器による分析が欠かせないためです。
自らの知識で化学災害の被害を最小限に抑えることができたなら、大きな達成感とモチベーションを得られることでしょう。

ぜひぜひ消防の世界に!