
消防士になりたい、消防の仕事に興味があるけれど…

東京DMATって何?

DMAT連携隊は、どの部隊のことを言うの?

東京DMATはどんな車で出場するの?

DMAT連携隊の活動が知りたい…
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、東京消防庁のDMAT連携隊のことがざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。
一人でも多くの命を救うための取組み
DMATは、災害派遣医療チーム「Disaster Medical Assistance Team」の頭文字をとって「DMAT(ディーマット)」と呼ばれています。
阪神淡路大震災の教訓から、救助活動と並行して、医師がその場で点滴等の医療行為ができれば、「救える命がある」として発足しました。
厚生労働省が発足させた「日本DMAT」と、各都道府県が独自に発足させている「都道府県DMAT」がありますが、この記事では、「東京DMAT」について書きたいと思います。
東京DMATは、東京DMAT指定病院(令和6年4月1日現在で27施設)の医師と看護師が出場する体制をとっています。
出場要請は、東京消防庁が東京DMAT指定病院に対して行います。(東京都知事の代行として行っています)
要請基準は以下のとおりです。
■ 負傷者等がおおむね20名以上発生した場合又は救急隊がおおむね10隊以上運用される場合
■ 重症が2名以上又は中等症が10名以上の負傷者等が発生し、迅速に医療機関に搬送できない場合又はその可能性がある場合
■ 負傷者等が1名以上発生し、救助に時間を要するなど迅速に医療機関に搬送できない可能性がある場合
■ 東京DMATが出場し対応することが効果的であると警防本部又は指揮本部長(最先着の中小隊長を含む。)が判断した場合

警防本部とは、指令室のことを言います。
指揮本部長とは、大隊長のこと言い、大隊長が到着するより早く中小隊長が到着している場合は「東京DMAT」の要請をすることができます。
指令室、大隊長、中隊長について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。



東京消防庁DMAT連携隊とは
東京DMATが災害現場に出場する時は、東京消防庁の部隊が東京DMAT指定病院まで迎えに行きます。
この迎えに行く部隊のことを「DMAT連携隊」と言います。
東京DMAT指定病院の近くにある消防署(出張所)の部隊が予め指定されています。
使う車両が、広報車(ワゴンタイプの車)やポンプ車になります。
隊長と機関員の2名で東京DMAT指定病院に出場し、その病院で医師、看護師を乗せて災害現場に向かうのです。
DMAT連携隊は、通常はポンプ隊やはしご隊ですが、東京DMATの要請があると切り替わります。
そのため、DMAT連携隊の隊長や機関員は、ポンプ隊やはしご隊の人員であるのです。

機関員について書いた記事がありますので、下にリンクを貼っておきます。
次からは、東京DMATがどのように災害現場で活動しているのか書いていきます。


災害現場活動
DMAT連携隊が災害現場で行う役割は、主に3つあります。
■ 医師・看護師に災害の状況を説明する
■ 医師・看護師の安全を確保する
■ 医師・看護師の活動を支援する

交通事故現場を例に災害現場活動を見ていきましょう。
「トラック3台の玉突き交通事故、トラック内部に脱出不能者あり」との指令。
警防本部(指令室)の判断でDMAT連携隊が出場。
DMAT連携隊は、〇〇病院(東京DMAT指定病院)に出場し、医師と看護師を同乗させ、交通事故現場に向かう。
出場途中に無線で交通事故現場の状況が流れる。
「トラック3台の玉突き事故で、2台目のトラック運転席に脱出不能。なお意識あり」
DMAT連携隊の隊長は、医師・看護師に無線内容を説明する。
交通事故現場に到着
DMAT連携隊の隊長が、大隊長のもとに先行し、DMATが着いた旨を報告する。
大隊長から部隊の活動状況、救出までの時間、活動危険を聞く。
「トラックの運転手の足と腹部が挟まっている。特別救助隊によりスプレッダーで車両内部を広げて救出する。救出時間は約20分を見込んでいる。活動危険はない。」

スプレッダーとは、油圧式救助器具のことを言います。
油圧の力で、車両ボディを潰したり、拡張することが可能です。
東京消防庁ホームページの画像リンクを下に貼っておきます。
DMAT連携隊の隊長は了解し、交通事故現場で二次災害の可能性がないか確認する。
すでに警察官が到着していて、交通整理が行われている…
トラックからガソリンなどの危険物は流出していない…
二次災害の危険はない。
医師と看護師も要救助者の近くで活動できる。
DMAT連携隊の隊長が大隊長に言う。
「危険がないため、医師が要救助者の処置を行います」
大隊長が了解する。
その後、医師と看護師を呼び寄せた。
DMAT連携隊の隊長は、すでに活動している特別救助隊長と救急隊長に医師が到着している旨を伝える。
特別救助隊長が言う。
「運転席の拡張が50%完了している。活動を一旦停止しますので、医師による観察と処置をお願いします」
DMAT連携隊の隊長と医師がうなずく。
救急隊も医師の支援にあたる。

災害現場では、要救助者を救うため医師による処置が優先されます。
特別救助隊や救急隊もその処置が直ちに行われるよう配意します。
特別救助隊や救急隊について書いた記事がありますので下にリンクを貼っておきます。




DMATによる処置
医師による観察が始まる。
運転手に話しかけながら意識のレベルを確認している。
さらに救急隊長とも連携し、呼吸・脈拍数、血圧、血中酸素濃度を確認する。
挟まれ部位を確認しながら、医師が言う。
「ラインをとります。」

「ラインをとる」とは、静脈に針を刺し、チューブをつなげて輸液路を確保することです。
この輸液路を使い、必要に応じて痛み止めなどの薬剤を投与することができます。
救急隊長が了解し、資器材の準備を行う。
医師が運転手の右腕に注射針を刺し、チューブをつなげる。
看護師もそれを補助する。
さらに薬剤(痛み止め)を投与する。
救急隊長に薬剤の保持を指示する。
そして、要救助者に声をかける。
「これで少し楽になると思います。頑張ってください。」
トラックの運転手が軽くうなずく。
DMAT連携隊長は、医師による処置完了を確認し、大隊長に報告する。
「医師による処置完了。活動再開して大丈夫です。」
大隊長が了解し、特別救助隊長に指示する。
「救出活動再開」
特別救助隊長は了解した。
特別救助隊員は、スプレッダーで運転席の拡張を再開する。
要救助者の容態は安定しているように見える。
スプレッダーにより運転席が拡張していく。
特別救助隊長が声を出す。
「停止!」
隊員がスプレッダーの作業を止める。
特別救助隊長が運転手の足部を確認して、隊員たちに指示する。
「救出可能!」
DMAT連携隊の隊長もその声を聞き、医師を要救助者のもとに連れて行く。
要救助者をトラックから出す前にもう一度容態を確認するためだ。
医師が要救助者の観察し、OKサインをだす。
特別救助隊と救急隊が連携して、首や脊椎を固定。
ストレッチャーを使用して、運転席をトラックの外へと救出した。
そのまま、救急車に収容する。
医師と看護師も救急車に乗り込む。
救急車はすぐに病院へと出発した。
要救助者を救出後、各部隊は資器材を撤収し、現場を引揚げた。
後日、トラックの運転手は退院し、社会復帰されたそうです。

DMAT(医師・看護師)とDMAT連携隊の活動はどうだったでしょうか?
救助活動現場で医師や看護師が救命処置(医療処置)をすることで、助かる命がたくさんあります。
それを間近で見てきて、「人命救助」には欠かせない取り組みだと感じています。
今回のエピソードのように救出した人が社会復帰されると本当に嬉しいです。
消防士になって良かったと純粋に感じることができました。
ぜひぜひ消防の世界に!