
消防の特別救助隊になりたい…

東京消防庁特別救助隊のワッペンの由来は?

ワッペンはセントバーナー犬?
と想いや悩みを巡らせているのではないでしょうか?
この記事では、これらの想いや悩みを
『東京消防庁もとレスキュー隊長』の『バリー』が今までの経験から解説・アドバイスします。
最後まで読んでいただけたら、東京消防庁特別救助隊のワッペンの由来がざっくり分かると思います。
ちなみに私は、

消防士は「やりがい」があって最高!
プライベートも充実させてくれて感謝!
って想っている幸せものです。
消防士になりたい、興味がある方にとって、この記事が消防の世界に足を踏み入れる『きっかけ』になってもらえると嬉しいです。
特別救助隊の誇り
東京消防庁特別救助隊員が着ているオレンジ色の隊服の左腕には、ワッペンが付けられています。

このセントバーナード犬は、実在していました。
その名は、「バリー号」
200年以上前、スイス・アルプスの山で雪なだれで埋もれたしまった人を救出する訓練を受け、救助犬として活躍していたのです。
言い伝えでは、40名以上もの人命を救いました。
中でも勇敢な行動として、凍てついた洞窟の中にいた少年を発見し、なめることで体を温め、背中に乗せて山小屋まで運んだそうです。
現在、バリー号の功績・精神が東京消防庁にも受け継がれ、特別救助隊をはじめ水難救助隊、山岳救助隊、機動部隊(ハイパーレスキュー隊)、即応対処部隊のワッペンに使われています。
そして、これらの部隊で人命救助最前線で活躍する人たちの象徴になっています。
この人たち全員が、このワッペンに誇りを持って災害現場に立ち向かっているのです。

私のニックネームもバリー号の功績・精神に感銘を受けて、使わせてもらっています。
次の記事は、特別救助技術研修に行って、左腕にワッペンを付けるまでのエピソードを私の経験を踏まえて紹介していきます。
特別救助技術研修
私は、高卒19歳で東京消防庁に入り、22歳で念願の特別救助技術研修に行くことができました。
研修期間は約1ヶ月。
長く…厳しい研修。
特に体力・精神面で鍛えられます。
研修生は50名で10班に分かれ、
1班5名に対して1人の教官が付き指導をします。
この10名の教官たち…
百戦錬磨を重ねた現役のレスキュー隊員で、階級は消防士長。
役職で言うと特別救助隊の中で副隊長をしています。

知識・技術・経験・体力・精神力の全てを兼ね備えていて、各消防署のレスキュー隊の中で選ばれた人たち。
この教官たちの厳しい指導が待っているわけです。
それは、とても…とても…険しい道のりの研修になります。

この険しい道のりの研修については、おいおい記事を書いていきますね。
そして、研修生みんなで特別救助技術研修を乗り越えたとき、教官から手渡されるものがあります。
それが…
「バリー号のワッペン」
差し出されるワッペン…
その輝きをいつまでも忘れることはありません。
そして、教官からバリー号の功績や精神を聞き、特別救助隊員になる決意がさらに沸き上がってきます。
こうして研修生は、特別救助技術研修を終え、消防署に戻っていくのです。
ワッペンを付けるまでの道のり
研修を終えて消防署に戻った研修生たち。
直ぐに特別救助隊員になれる訳ではありません。
見習い期間があります。
この期間、「特別救助隊の予備隊員」と呼ばれます。
はしご隊員やポンプ隊員をしながら、特別救助隊の資器材点検や訓練に参加するのです。
ここで、いくつもの資器材の特性や能力、そして使い方を覚えます。
そして、訓練に参加し人命救助方法を徹底的に学んでいきます。
先輩や副隊長、そして隊長からも厳しい指導を受けることになります。
特別救助技術研修よりも厳しいかもしれません。
この予備隊員期間が1年から2年ほど続き、ようやく特別救助隊員になれるのです。

予備隊員期間は、人によってまちまちです。
私は、1年半の予備隊員期間を経て特別救助隊員になれましたが、人によっては3~4年かかる人も希にいます。

左腕に輝くバリー号
予備隊員期間を経て、いよいよ…
署内異動により正規の特別救助隊員に任命されます。

新しいオレンジ色の隊服を着て、左腕にワッペンをつける。
こんなに嬉しいことはありません。
鏡で自分の姿を何度も見ます。
そして、左腕を前に出してワッペンを確認する。
そこにはバリー号が輝いています。
自分の相棒にも感じられます。
一緒に「人命救助」を頑張っていこうと決意が表れていくのです。
そうして、バリー号の精神とともに様々な災害現場に行き、人命救助をしていくことになります。
バリー号の精神は受け継がれる
特別救助隊員には、年齢制限があります。
隊員は35歳、隊長は45歳。
私は、40歳で特別救助隊長を退任しました。
バリー号のワッペンとも卒業になります。
この時の寂しさは、言葉には表しきれません。
ただ、特別救助隊を卒業した人たちは、中隊長や指揮担当になり、部下の消防士を育てていくという使命があります。

私もそうでした。
ワッペンは、執務服の左ポケットに入れ、バリー号の精神のもと、部下育成に専念します。
今までの災害経験、訓練で培った技術、知識、精神力を伝えていきます。
こうしたことは、私に限らず東京消防庁の中で繰り返し行われていきます。
こうして、バリー号の精神は東京消防庁全体に受け継がれていくのです。

200年も前に活躍していたバリー号の功績と精神が、東京消防庁に引き継がれていることを誇りに思っています。
この先もそうであってほしいと切に願います。
ぜひぜひ消防の世界に!